我が家の日曜晩御飯は概ねカレーライスということになっている。昔は参考書と首っ引きで何十種類も香料を集めて作ったりしたが、今はもうそんな面倒なことはしない。ごくごく普通のカレーライスである。ハウスバーモントカレーなどという、料理マニアが軽蔑するような市販のカレールーを使う。というのも辛いものが苦手な山の神にも食べてもらわねばならないので、一旦「辛くないの」を作って取り置いて、それをベースに「辛いの」を拵える二段階調理をするので、まずは学校給食のカレーみたいなものにならざるを得ないのだ。
とにかくカレーが好きで子供の頃からカレー作りに励み、70年の年季が入っている。あれこれやってきた経験から言うと、美味いカレー作りの秘訣は「大量の玉葱をじっくりと気長に炒めること」に尽きる。あとは、じゃがいもを一緒に煮込んでぐずぐずに煮溶かしてしまないことくらいであろうか。これだけを守れば市販のカレー粉とルーで十分美味しいのが出来る。
私は鶏肉が一番好きで、次が牛肉、次が豚肉。マトンもとても旨いのだが、なかなか手に入らない。シーフードカレーも美味しいが、これはどろりとせずにスープカレー風にした方がいい。
今日は豚肉しか無かったのでポークカレー。冷蔵庫から出した肉にカレー粉をまぶし、常温に1時間以上置いておく。玉葱を櫛形に切る。大きなものなら4個、小型中型なら5個。これで我が家の大鍋(直径25cm、深さ15cm)の八分目くらいになる。玉葱を入れる前に鍋に刻みニンニク3,4片分、クミン、フェンネル、コリアンダーパウダー、ナツメッグを入れて炒め、良い香りが立ってきたら切った玉葱をどさっと入れて、弱火にして木のシャモジでかき混ぜる。最初は玉葱が鍋からあふれるほどだが、やがてカサが減って来る。10分くらいたつと半分ほどになるから、ここで月桂樹の葉を5,6枚入れる。さらにさらに掻き混ぜ、炒め続ける。最低30分、手首が痛くなる頃、玉葱は狐色になり、あれだけあったのがソフトボールほどになっており、粘り気が出ている。炒め上がった玉葱ボール(これをケーキと呼ぶのだそうだが)に湯を1リットルばかり注ぎ、一口大に切った人参と固形スープの素を2個、白ワイングラス2杯注いでふつふつと煮る。
一方、カレー粉をまぶしておいた豚肉をフライパンで焼く。焦がさぬよう、しかし焼色がつくくらいに炒め、オニオンスープの鍋に入れ、粉チーズを大さじ2杯入れて、ことこと煮込む。冷蔵庫の野菜室にしまい忘れていたセロリがあったので、それもサイコロに切って入れた。じゃがいもはきれいに洗って皮付きの丸のまま耐熱皿に載せ、水を少し振ってラップして600Wレンジに9分かける。人参が柔らかくなったら、肉も柔らかくなっているから、ここで市販のカレールーを3片入れる。溶けたら「山の神カレー」の出来上がりなので、別の小鍋に必要量を取り分ける。残った方にはカレー粉とガラムマサラ、チリペッパーを入れ、隠し味にアンチョビソースを大さじ1杯ほど入れる。
大皿に御飯と薄皮を剥いたじゃがいもを載せ、その上からポークカレーを好きなだけかける。付け合せはサラダ菜とトマト、オリーブ、胡瓜。ズッキーニのチーズ焼き、塩らっきょう。さあいただきましょう。
夏台風去ってカレー日和かな 酒呑堂 (23.06.04.)