2019年11月19日

俳句日記 (546)


千葉・養老渓谷吟行 (2)

 養老渓谷には随所に温泉が湧き出し、小湊鐵道養老渓谷駅を少し入った所から養老川沿いに六、七キロ上流までに十軒の温泉宿がある。我々の宿はその最も上流の粟又ノ滝を見下ろす「滝見苑」。チバニアン見学を終え、ガイドの元気オバサマに別れを告げて元来た道を月崎駅に戻り、宿のお迎えバスに揺られての道々、養老温泉の旅館を瞥見したところでは、このどん詰まりに建つ滝見苑が規模も設備も他を圧倒しているように見えた。
 滝見苑は急な崖地にへばりつくように建物が山の上の方に伸び上がっている。下の車道から見上げると何百室もある大ホテルに見えるが、33室の中規模温泉旅館である。車道に面した「東館」は一階が玄関、フロント、ロビー、レストランなどで、二階が大小の宴会場、その隣の一階分崖を上がったところに「南館」があり、これが三階と四階になっている。南館の三階廊下を突き抜けると「別館」がある。別館は四階建で各階四室、我々一行16人はその二階、下から数えると四階の四室を割り当てられた。窓からは養老渓谷の断崖が見え、「今年は紅葉がことのほか遅い」とフロント係の言う通り、梢がようやく赤くなり始めた紅葉や黄色味がかった雑木を眺める。
 晩食懇親会は6時半。まだたっぷり時間があるから温泉に入ろうと、部屋を出たはいいが、いま辿って来た廊下の順路が分からなくなった。「こういう所に来ると必ず迷っちゃうんだよな」と相部屋の而云がぶつぶつ言っている。
 まず別館の端まで戻るとエレベーターがある。それに乗って一階下りると南館三階となる。南館の廊下を突き当たると滝見苑自慢の「化石風呂」がある。先代か先々代がこの場所に狙いを定め試掘したところ、五百メートル近辺で温泉が湧き出し、古代の化石が沢山掘り出されたので化石風呂と名づけた云々の能書きが湯舟の壁に掲げられている。
 養老渓谷温泉は黒褐色の「黒湯」が普通なのだが、滝見温泉は無色透明の「白湯」でさらさらしており、かすかに硫黄などの鉱物臭がする。温泉を名乗るには少々湯温が足りないようで、適温の40℃に加温しておりますと、なかなか正直である。チバニアン見学の渓谷の上り下りを始め、今日はずいぶん歩いた。万歩計を見ると12299歩とある。すっかり草臥れた足腰をいい湯で揉みほぐした。
 こんな山奥でどんなものを食わせるのかと思っていた宴会料理だが、なかなかのものだった。ことに岩魚の塩焼が実に美味かった。岩魚は夏の季語なので今ごろでは句にしづらい。夏の季語になったのは渓流釣りの獲物の王者とされたためらしい。しかし食べて美味いのはむしろ秋から冬の脂の乗ったところなのではなかろうか。ことにこうした養殖岩魚の場合など、少し冷え込んで来た今ごろが身も締まっていいのではないか、などと勝手な素人解釈をしてむさぼった。
 酒は地元大多喜町の銘酒「大多喜城」の純米吟醸生貯蔵。なかなかいい酒だが、ちょっと甘い。普通酒でいいからもう少しさらっとしたのをなどと注文つけて、あれこれ取り寄せ、美酒佳肴に堪能した。
  養老温泉絶品塩焼冬岩魚   酒呑洞水牛
posted by 水牛 at 22:05| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする